当研究室について

中篠研究室では、コンピュータを利用した数値構造シミュレーションを通じて、柔軟膜面の力学挙動を研究しています.膜面と宇宙に何の関係があるの? と思われるかもしれませんが、実は膜面を利用した宇宙構造物が各国で研究開発されているのです.

ゴッサマ-宇宙構造物について

大面積の膜面を利用した宇宙構造物を「ゴッサマ-宇宙構造物」と呼びます.国内ではJAXAが開発した小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSが、遠心力を利用して14m四方の膜面を宇宙空間で展開し、太陽の光の力をつかって推進力を得ることに成功しました.その他、米国ではハッブル宇宙望遠鏡の後継機として、2022年からジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の運用が開始されました.この宇宙機には5層の大型膜面が搭載されており、観測時のノイズを防ぐ役割を果たしています.このような宇宙機がゴッサマ-宇宙構造物の代表例です.

宇宙空間ではさまざまな理由から大面積のコンポーネントが必要となるのですが、ロケット打ち上げ時にはすべてをフェアリング(ロケットのさきっぽ)に格納しなければならず、そのためコンパクトに収納可能な柔軟膜面が利用されるのです.ゴッサマ-宇宙構造物の歴史は意外にも古く、米国では早くも1960年に、エコー1Aというゴッサマ-宇宙機が軌道に投入されています.エコー1Aは宇宙空間で直径30mの風船状膜面を膨張展開させて大陸間の通信中継を行いました.膜面にはマイラーとよばれる素材が使われましたが、これは皆さんおなじみのパーティー・バルーンに使われている素材と同じものです(ちなみに英語ではパーティー・バルーンのことを「マイラー風船: Mylar balloon」 といいます).

柔軟膜面の数値構造シミュレーションについて

構造物の数値構造シミュレーションには、有限要素法とよばれる手法がひろく用いられており、さまざまな製品開発に利用されています.有限要素法は、皆さんがお持ちのスマートフォンの落下衝撃解析にも用いられている技術です.

柔軟膜面の数値構造シミュレーションにも有限要素法が利用できるのですが、「ふにゃふにゃ」した膜面のシミュレーションはそれなりに大変で、そのためいろいろな解析技術が研究されています.当研究室では、主にゴッサマ-宇宙構造物を念頭におき、柔軟膜面の数値構造シミュレーション技術に関する研究を行っています.

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