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回転飛行する種を応用した飛翔体の研究


   
     オニモミジの種              ラワンの種

 植物の種の中には1つあるいは複数の翼を持ち、回転しながら飛行するものがあります。代表的なものは左の図のモミジの種や、右の図のラワンの種などがあります。これらの種は枝から離れるとヘリコプターのローターのように回転飛行をしますが、ヘリコプターのエンジンに相当するような動力を持っていません。動力を持たない種がなぜ回転できるのかというと、落下によって翼に当たる空気が種を支える力と種を回転させるトルクの両方を作っているためです。

   

 そのメカニズムを示したものが上の図です。上の図のA断面とB断面はそれぞれ翼の内側と外側の断面を示していますが、内側のA断面は回転中心に近いため回転によってできる流れの速度が小さく、B断面では大きくなります。その結果、A断面では、落下による流れのベクトル(黄色)と回転による流れのベクトル(水色)を合わせたベクトル(黄緑色)が斜め上を向いて、これと直角方向に生じる揚力が種の回転方向に傾くことになります。一般に揚力は抗力よりも大きいため、その合力も種の回転方向を向くことになり、種を回転させるトルクを作ります。
 一方で、B断面では、落下による流れのベクトル(黄色)はA断面と同じですが、回転中心から離れているため回転によってできる流れのベクトル(水色)は大きくなり、それらを合わせたベクトル(黄緑)は水平に近い方向を向きます。その結果、それと直角方向に生じる揚力は上を向き、抗力との合力も上を向くことになって、種を支える力を作ります。言い換えれば、種の内側で回転させる力(トルク)を作り、外側で支える力(揚力)を作りながら飛んでいるわけです。このような飛行方法を「オートローテーション(自動回転)」と呼んでいます。ヘリコプターでもエンジンが故障した時にはオートローテーションを用いて緊急着陸します。

        
            回転翼型飛翔体の模型

 研究室では、上で述べた方法を利用して飛行することができる飛翔体の研究を行っています。上の図はその模型で、ラワンの種のように2枚の翼を持ち、上空から落下させると自動回転しながら飛行します。この飛翔体にカメラ等のセンサーを搭載して飛行中に情報収集をするといった利用方法を検討しています。