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鳥の翼の風切り羽を応用した集合翼の研究


       

 鳥の翼は航空機のような翼とは異なり、多数の羽が集合してできた集合翼です。羽にはいくつかの種類があり、翼端付近にあるものが初列風切り羽、その内側にあるものが次列風切り羽と三列風切り羽、それ以外にも雨覆い羽と呼ばれる小さな羽があり翼の表面を覆っています。つまり航空機のような一枚の翼とは全く異なる小さな羽の集合体であり、それによって飛行中に自在に形を変えたり、多少の羽が壊れても他の羽で代用できるといったメリットを持っています。翼の設計原理としては大変面白い対象ですが、本研究では集合翼が持つ飛行安定性に焦点を当てて研究しています。

弾性変形と安定性の向上
 鳥の翼の翼端付近にある初列風切り羽は、鳥の羽の中では最も大きなものですが、素材は柔らく、飛行中に弾性変形によって反り返ります。これによって風切り羽の間に隙間が生じ、航空機の隙間フラップのように流れの剥離を抑えたり、翼端渦を分散させて誘導抗力を抑えたりする効果があると言われています。本研究では、それ以外の効果として弾性変形による飛行安定性の向上効果を分析しました。 

      
       風切り羽の模型           風を受けて反った羽

左の図は実験に用いた風切り羽の模型です。プラスチックでできており、風があたると変形し右の図のように反り返ります。風洞実験を行った結果、この変形が翼端の上半角を増し、機体の横滑りを抑えていることがわかりました。また、弾性変形によって上に反ることで翼の側面面積が増大し、横滑りの際の抵抗を増大させて、こちらも機体の横滑りを抑えていることがわかりました。すなわち、弾性による変形は機体がフラフラと横に動くことを防いで、直進安定性を高める効果があることがわかりました。この効果は、例えばワシやタカのような大型の陸鳥が、上空から地上の餌を探す時に見つけやすくしたり、目標地点に真っすぐ飛んだりすることを助けていると考えられ、小型航空機の翼に応用すれば、地上物体の観察精度を上げたり、効率良く目標地点に移動することを可能にすると考えられます。

      
         風洞実験の様子(アルミ集合翼)

      
         風洞実験の様子(弾性集合翼)