本文へスキップ

イルカの泳ぎや形態についての流体力学的な研究


    

 イルカは水中での泳ぎに適した特徴を持っています。胴体はきれいな流線型をしており、泳ぐ時に流れが剥がれにくく、抵抗のもとになる渦が発生しにくい形をしています。また、身体の表面は滑らかで摩擦抵抗も少なくなっています。
 さらにイルカは、水中で楽に泳ぐためにある種の流体力学的効果を積極的に利用していると考えられます。それがイルカの親子に見られる「抱っこ泳ぎ」です。イルカの子供は生まれてからしばらくの間は遊泳力が弱く、親イルカと同じ速さで泳ぐことができません。そこで親イルカは子イルカと並んで泳ぎ、親子のイルカの間に働く吸引力を利用して子イルカを引っ張って泳ぎます。この吸引力は「ベンチュリ効果」と呼ばれる流体力学的な効果によって生じます。
     
 ベンチュリ効果とは、上の図のように流れの速さが増すと圧力が下がるという現象で、流れのエネルギーと圧力のエネルギーを足したものが一定であるという「ベルヌーイの定理」から導かれます。親子の間を流れる流れは、狭い場所を通り抜けるために速く流れる必要があり、このため流れのスピードが上がって圧力が下がります。これが親子の間に働く吸引力となり、子イルカは親イルカに吸い寄せられるように引っ張られ、尾ヒレを動かさなくても親イルカについて泳ぐことができるのです。これはまるで人間のお母さんが赤ちゃんを抱っこして歩いているような行動なので、「抱っこ泳ぎ」と呼ばれています。抱っこ泳ぎの様子は下記のリンク先で見ることができます。

  (抱っこ泳ぎの動画1) (だっこ泳ぎの動画2

 研究室ではこの効果が子イルカの大きさや位置によってどのように変化するかを風洞実験によって調べています。イルカの親子に見立てた大きさの異なる流線型模型を3Dプリンタで作成し、互いの位置を変えながら抵抗の大きさ等を計測しています。その結果、抵抗が最低となる子イルカの位置や、位置によっては抵抗が増える場合があることなどが明らかになっています。

    
            親子のイルカ模型の風洞実験